【7月4日】自分で考えて…
- 公開日
- 2024/07/04
- 更新日
- 2024/07/04
校長のひとりごと
人間学を学ぶ雑誌『致知』に、北海道日本ハムファイターズチーフ・ベースボール・オフィサーの栗山英樹さん、そして臨済宗円覚寺派管長の横田南嶺(よこたなんれい)さんの対談が載っていました。その中で、現在大リーグで活躍中の大谷翔平選手のことにふれた部分がありました。
横田さんが「大谷翔平はなぜ世界の大谷翔平になったか?」という質問に対し、栗山さんはこう答えられています。
「もちろんご先祖様からの遺伝子がうまく組み重なって、あれだけの体格と能力が生まれているのは事実ですけど、僕が思っているのは『自分で考えて自分で答えを出してきた』ということです。自分で考えてやったことしか、失敗したときにプラスにならないという話をよくするんです。要するに、人から言われたことを鵜呑みにしてやっていると、うまくいかなかった時に本質的に自分のせいにならないので、進み方が遅いという感覚を彼は持っていると思います。二刀流という、前例のない初めてのことに挑戦するに当たっても、練習メニューを最後は全部自分で考えなきゃいけない。常に自分で考えて自分でやってきた習慣が、ああいう選手をつくりあげた。ですから、子どもの時からできるだけ自分で考えて失敗をする、自分で考えて成功するという経験をさせてあげる必要があるというのが、僕が彼から得た学びですね」
また、横田さんは以前、栗山さんに見せてもらった大谷選手のバッティング練習の映像に驚いたことにふれていました。というのも、その映像の日付けが2016年12月24日午前1時。その年、日本ハムファイターズは日本一になり、いろいろな祝賀行事があって、ようやくクリスマスの頃になると落ち着き、家族や友人たちと過ごしたりするのが普通なんでしょうが、彼はクリスマスイブの夜中にバッティング練習をしているということだったそうです。それに対して栗山さんはこう答えています。
「そういうこと(チームメイトや友人などと食事をしたりお酒を飲んだりすること…)に時間を使うよりも、練習をしたり睡眠をとったり、最大限のパフォーマンスを発揮できるように準備をして、5万人の観客を沸き立たせる喜びのほうが遙かに大きい。だから、いまは遊んでいる時じゃないと。その2016年、翔平は紅白歌合戦の審査員を頼まれて受けるんですけど、その時に出した条件がありましてね。年末年始ってチームの合宿所が全部閉まってしまう。だから、その間の練習場所を確保してくれるならやってもいいですよって。いついかなるときも生活の中心に野球がある。僕はそれを聞いて、やるなと思いました。やっぱり長島茂雄さんでも王貞治さんでも、名選手は人知れず尋常ではない努力をしていますよ」。
これまでも様々なエピソードや名言を残してきた大谷選手ですが、やはり尋常ではないくらいの野球への情熱、誰もマネできないくらいの練習や努力の上での、現在の結果であるということが今回の話からもわかります。また、自分で考えて、自分でやってみることの大切さ…成功体験だけでなく、たくさんの失敗体験を通して、人は考え、学び、また努力をして成長していくのだということを大谷選手の生き様を通して、栗山さんは教えてくれています。
恵まれた体格、能力を手に入れることは困難でも、置かれた状況の中で、目標をもって自分自身を分析し、具体的に努力を続けていくことこそ、真の力になっていくのだということを、大谷選手をはじめ多くの人から学ぶことができます。謙虚さを持ちつつも、自分の力や可能性を過小評価せず、実践していくことが大切だと思います。