学校日記

【7月1日】Nさん

公開日
2021/07/01
更新日
2021/07/01

Kのつぶやき

 明日は、3年生の進路説明会です。九州産業高校広報部長の霧島悠司先生をお招きしての講話と各担当からの説明をする予定です。3年生の保護者の皆様におかれましては、お忙しいこととは思いますが、ぜひ参加していただければと思います。
 先日、3学年主任の南橋潤先生から、「校長先生、説明会の最初に挨拶をお願いします」と言われましたので、その挨拶を考えているところでした。その中では私の出会った一人の生徒のお話をさせていただこうと思っています。今日のひとりごとは、その中で話をしない別の生徒Nさんについて、つぶやきます。

 Nさんは、私が2年・3年と担任をしました。陸上部の部長そして、生徒会体育委員長でした。とにかく努力家でした。2年生のときには、合唱コンクールの実行委員も務め、練習当初なかなか真面目に取り組まなかったクラスの状況を嘆き、泣きながら私に思いをぶつけてきました。話し合いや様々な取組をしながら、最後は聴いている人を感動させる立派な合唱へと導いてくれました。そして、3年生5月の体育祭では、「体育祭実行委員長」として全校生徒を引っ張りました。閉会式でNさんは、
「私は○○中が大好きです・・・そして、みんなが大好きです・・・ここまでみんなと頑張れたことを誇りに思います・・・みんな、本当に本当にありがとう!」。そんな言葉を、涙を流し言葉を詰まらせながらもしっかりと言うのです。常に頑張るNさんの姿勢は全校生徒にも響いており、彼女が言葉を詰まらせると、「Nさん!がんばれ!」「Nさん、ありがとう!」と、心から応援する声がたくさん聞こえてきました。その光景に感動した教員も保護者も涙を流すのです。もちろん、たくさんの子ども達も泣いていました。彼女の頑張りがみんなの心を動かし、素晴らしい体育祭を創りあげ、人々を感動させました。
 そんな頑張り屋のNさん、実は3年生4月の生活ノートにこんなことを書いていました。
「先生、今年も担任してくれてありがとうございます。今年もよろしくお願いします。・・・先生、私は3年生になったので、これからは、毎日サボらず勉強します!」
 決してサボっているなんて思えないほど勉強も頑張っていたNさん、それから毎日毎日休まず勉強(家庭学習)したのです。体育祭の日もきっとヘトヘトなのに勉強していました。陸上部の大会の日も勉強していました。自宅での過ごし方を示す図に「家庭学習の時間」がきちんと書かれているのです。ちなみに、Nさんの将来の夢は「弁護士か検察官」でした。

 あるとき私は、Nさんのお母さんに尋ねました。「お母さん、どうやったらあんなに頑張る子になるんですか?」。お母さんは、「いや〜先生、何にもしてませんよ。私も主人も娘には、あまり言いませんし・・・」
 また別の日、Nさんに聞きました。「何で、毎日きちんと勉強できるの?きつくならない?」。Nさんはこう言いました。「きついなと思うときもありますけど、ある程度習慣づいているのかと思います。うちの親は“勉強しなさい!”とは言いません。ただ、うちでは私たちが小さいときから、8時以降は家のテレビは消して、私たちも親も読書や勉強の時間となっているのです。」・・・私は、家に帰るとダラダラとテレビを観たり、ゴロゴロばかりしたりしている自分が恥ずかしくなりました。Nさんの家では、親がしっかりと自分の行動で子ども達に教えているのだとわかりました。
 Nさんは、塾には行かず筑紫丘高校に進学し、優秀な成績で3年間を過ごしました。その後、九州大学法学部、そして司法試験にも合格し、中学からの目標であった検察官になったのです。

 私は、Nさんからたくさんのことを学びました。Nさんは、自分に厳しく大変な努力家であるとともに、友達や周りの誰に対してもとても優しくて、みんなから慕われていました。成績は、とても優秀でしたが、決して威張らず謙虚で、困っている友達には積極的に手を差し伸べる生徒でした。だからこそ、誰からも信頼され、人として自分を伸ばし、成長していったのだと思います。
 やはり人は、「努力」「継続」「思いやり」「感謝の気持ち」・・・何より、「人間性」を大切にすることが、伸びていく秘訣なのだと思います。