【10月24日】アウトプット
- 公開日
- 2025/10/24
- 更新日
- 2025/10/24
校長のひとりごと
研修3日目が終わり、研修に参加された福岡県中学校長会の先生方と、高松市の会場からバスに乗り岡山駅に向かっています。写真は「世界一長い鉄道道路併用橋」としてギネス世界記録にも認定されている瀬戸大橋です(与島サービスエリアから撮ったものです)。スケールの大きい瀬戸大橋、そして瀬戸内海の絶景が見られ、爽快な気分になりました。18時頃に博多駅に到着予定です。
さて、言語学者の堀田秀吾さん著『すごい習慣大百科』の「誰かに教える意識をもつ」からです。
自分が学んだことを誰かに教えようとして、うまく説明できなかった経験をもつ人は多いのではないでしょうか。教えるという行為は、教える側がしっかりと内容を理解し、整理してインプットすることが重要です。まばらに頭の中に叩き込んでも、人にはうまく伝えることができません。
ワシントン大学セントルイス校のネストイコらは、「あとで人に教えるという意識をもって勉強すると、それだけで学習効果が上がる」という研究結果を報告しています。人に教えるという意識をもつからこそ、まばらにインプットしないようになる…そんな逆転の発想で、勉強をしようというわけです。実験では56人の大学生を、次の3つのグループに分けて行いました。
①人に教えることを前提にしたグループ
②あとでテストを受けることを前提にしたグループ
③とくに何も前提としないグループ
そのうえで、ある戦争映画における描写と史実に関する1541語からなる文章を読ませ、関係のないことをしばらくしてもらったあとに、学んだ内容についての自由記述および、内容に関する短答式(選択式)のテストを実施しました。その結果、自由記述と短答式、双方において①の人に教えることを前提したグループの成績がよくなったといいます。
教えることは自分のもつ知識や技術を、学ぶ側(学生や部下など)に一方的に伝える作業に見えるかもしれませんが、学ぶことと教えることは表裏一体です。みなさんも思い当たる節があるはずです。誰かに大事な伝言を伝えてくれと頼まれたとき、その内容はほかの記憶よりもちゃんと覚えているはずです。それは、あなたが正確に伝えたいという気持ちがあるからこそ、頭のなかにインプットされやすくなり、理解につながるのです。
教えるという意識をもてば、緊張感や集中力、注意深さをもって、学んだり深掘りしたりできます。本当に教えなくてもただそういう想定・意識で臨むだけで効果があるということがこの研究では示されています。とはいえ、その意識をもっているだけだと、脳が慣れてきて、「これはウソだな」と思ってしまうかもしれません。それを回避するためには、実際に家族や友人、パートナーなどに、説明するような機会があることが望ましいです。「誰かに教えたい」、その気持ちも忘れずに。
今回の研修の中でも、文部科学省初等中等教育主任視学官の田村学さんが「アウトプットの重要性」について話をされました。また、樺沢紫苑さん著『アウトプット大全』の「はじめに」には、次のように書かれています。
知識を詰め込むインプットの学びだけでは、現実は変わりません。インプットしたら、その知識をアウトプットする。実際に、知識を「使う」ことで脳は「重要な情報」ととらえ、初めて長期記憶として保存し、現実にいかすことができます。これが脳科学の法則です。脳の基本的な仕組みを知らないことで、人生の貴重な時間を失っている。計り知れない損失をこうむっているのです…。
もちろんインプットも大事です。ただ、覚えようとするのではなく、誰かに教える、説明する、使うことで、本物の知識や知恵となっていくということでしょう。学校の授業では、友達と対話したり説明しあったりしながら、様々な方法を選択し課題解決に向かっていくことが盛んに行われています。いかにアウトプットする場面をつくっていくのか、どのような形でアウトプットさせるかを考えながら授業づくりをしています。これからも“探究的な授業”をできる限り展開しながら、予測困難な未来の担い手・創り手となる子どもたちが、たくましく生きていく力を身につけさせなければなりません。
[ひとりごと 第1100号]