【1月21日】読解力
- 公開日
- 2026/01/21
- 更新日
- 2026/01/21
校長のひとりごと
人間学を学ぶ月刊誌『致知』2月号の中に中村学園大学客員教授の占部賢志さんが書かれた「読解力危うし!」というものがありました。
■教科書が読めない
近年、自国の文章が読めない日本人が増えています。子供は教科書が、大人は取扱説明書が読み取れず、内容を理解する以前に入り口でお手上げ。十年ほど前から国立情報学研究所作成のリーディングスキルテストが実施されていますが、事態は深刻です。
出題例を挙げてみましょう。課題文として示されているのは中学社会科教科書の一部です。
「仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教はアフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている」。
これを読んで、オセアニアに広がっている宗教は何か、次の選択肢から選ぶのです。
〈ヒンドゥー教/キリスト教/イスラム教/仏教〉
正解はキリスト教ですが、中学生ら受験者の約4割が間違うのです。結果が報じられたときには教育界に衝撃が走りました。キリスト教とオセアニアが有機的に結びつかない。知の断片化が起きているのです。
■省略された主語
文章が読めない理由として同研究所の新井紀子教授がとくに指摘するのは、知識というより読解力の劣化。次のテスト問題の結果を見ればその現実は一目瞭然でしょう。課題文はいたって平易。
「Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある」。
この文章に関して、Alexandraの愛称は何かを選ぶ問いです。その選択肢は
〈Alex/Alexander/男性/女性〉。
この問題では中学生の6割以上が誤答しています。正解のAlex(38%)より女性(39%)の方を選んでいるのです。どうして中学生はそんな選択をしたのか。新井教授は、「女性の名Alexandraの愛称である」という文の主語が「Alex」であることを見落としているからと分析しています。省略された主語が読み取れないのです。もう一つ、おそらくは「愛称」という語を知らないから飛ばして読んでしまう。そんな習性があるためではないかということです。 …(後略)…
「読解力」ってとても大切です。たとえば「数学」の文章問題などでは、問題文の意味や意図を理解できなければ、解く方法は知っていても正解にたどりつけません。これは他の教科においても同様です。実は、最新の世界的な学力テストである「PISA」においては、読解力については日本は世界トップレベルとなっています。しかしながら、上記のようなことが起きている。これは、SNSなどソーシャルメディアの急速な普及によって、短文慣れや飛ばし読みなどが大きな原因になっているのではないかといわれています。短いテキスト文のようなもので「理解した」と勘違いしたり、飛ばし読みをしたりして、じっくりと読み、十分に理解することが少なくなっているせいかもしれません。
また、目の前の文章や情報を鵜呑みにして「なぜ?」「どうして?」「これはどういう意味だろう」と、深く考えずに流していく現状もあると、様々なところで指摘されています。そうすると、文字としては直接書かれていない、相手の本当の気持ちや意図を汲み取る「行間を読む」なんてことはいよいよ難しくなってきているのかもしれません。
教育においてもデジタル化が進み、授業にもたくさん取り入れるようになりましたが、「読解力」を身に着けさせることを忘れず、授業や活動に取り組まなければと思います。これまでご家庭でもなされてきた読み聞かせや音読、学校であれば主人公の気持ちを考えたり、文章の意味を深く考える場面をつくったり、相手の気持ちを察するような話をしたり…教科を超えて読解力育成を意図的に進めていくことが大事なのだと思います。
(ひとりごと第1150号)