【10月15日】学を為す
- 公開日
- 2024/10/15
- 更新日
- 2024/10/15
校長のひとりごと
東洋思想研究家・田口佳史さんの『超訳 言志四録 佐藤一斎の「自分に火をつける言葉」』という本があります。「はじめに」から抜粋します。
いまの世の中、ますます人間関係は複雑になり、一寸先は闇、想定外のことが襲ってくるし、新しい技術や知識はどんどん出てきます。外国の人や情報も多量に入ってきます。「生き馬の目を抜く」とはまさに今日の社会のこと。実に生きづらく、難しい時代なのです。どうしたらよいのか。なんと言っても、こうした時こそ経験と学識がともに充分な老練の指導者に学ぶのが最良なのです。「佐藤一斎」こそがうってつけの人物です。150年前の日本の大転換期・幕末において、これほど多くの英傑を育成した人はいません。数千人に上る直弟子には、たとえば佐久間象山がいます。その象山の門下から、勝海舟、坂本龍馬、吉田松陰、小林虎三郎らが輩出しました。さらに、吉田松陰の門下からは高杉晋作、久坂玄瑞、木戸孝允、伊藤博文、山県有朋などが出ています。…(後略)…
そんな佐藤一斎が塾生たちに講義をしてきた、その記録、『言志録』『言志後録』『言志晩録』『言志耊(てつ)録』の四冊をまとめて『言志四録』と呼んでいるそうです。この本は、1133条もの言葉の中から、田口さんが厳選して解説したものとなります。
「学を為すの効は、気質を変化するに在り。其の功は立志に外ならず」
『言志四録 28』で一斎は「学問をすると、性格が良くなる。その原動力となるのは、志を立てることにほかならない」と言っています。「習い性になる」という言葉がありますね?これは、最初のうちは「こうしなきゃいけないぞ」と自分に言い聞かせて行っているようなことでも、繰り返せばそれが習慣になり、性格が変わってくるということです。たとえば、気分にムラのある人が「機嫌の良し悪しを他人にぶつけてはいけない」と学び、「何があっても笑顔でいよう」と決めたとします。これは意外と難しい課題ですが、気持ちが落ち込むようなことがあっても、人からイヤなことをされても、努めて誰に対してでも笑顔を向けていると、だんだんに意識せずとも笑顔でいられるようになる。良い習慣が性格を良い方向に変えていったということです。
さらに一斎は、そういった学習効果が立志にもおよぶとしています。どういうことでしょうか。「立志」とは「立派な人間になろう」という志を持つことです。そういう志があれば、「よく学んで人間性を磨き、性格をより良く変えていかなければ」と思いますね?逆に言えばそれは、「立志が学びの原動力になる」ということです。
志があるから学ぶ、学ぶから性格が良くなって立派な人間になり、志が成就(じょうじゅ:成し遂げる)される。そういう好循環を、学びを核にしてつくることが大切なのです。
「学び」はとても大事です。知ること・学ぶことによって、視野も広がります。もちろん単なる「知識」だけでなく、それを人の役に立つ「知恵」に変えることも大切です。性格がすぐに変わることはないですが、田口さんの解説にあるように、よい習慣を続けることによって、よい方向にいくことは真理だと思います。まだまだ「学び」の足りない私はこれからも学び続け、少しでもよい習慣をつくり、人間性を磨いていかなければと思います。