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【9月15日】縁の下の力持ち

公開日
2023/09/15
更新日
2023/09/15

校長のひとりごと

 先日も紹介した鹿島しのぶさんの著書『小さな感謝』からです。

 「縁の下の力持ち」という言葉があります。「他人のために影で苦労や努力をすること・人」「見えないところでまわりの人を支えてくれる人」のことですが。それこそ、目立つこともなければ、賞賛されることもないような役目を引き受けてくれる存在だといってもいいでしょう。
 たとえば、ラグビーではプロップというポジションが、縁の下の力持ちとされています。プロップは、スクラムを組むとき、最前列で相手と組み合って、パワーとテクニックで、試合の展開を有利にするために全力を尽くします。また、ラインアウトの際には、味方の選手(ジャンパー)をより高く持ち上げて、ボールをゲットするための役割を果たします。いずれもじつに地味な仕事ですが、試合の勝敗を決定づけるうえで重要なポジションになります。…(中略)…
 こうした「縁の下の力持ち」は、社会生活を送る際やビジネスシーンにおいても貴重な存在…「与える人」です。人が嫌がる仕事を率先して引き受けてくれる人や、自分が損をしてもまわりの人のために犠牲になることをいとわない「与える人」がいてくれるからこそ、私たちは快適に生活したり、スムーズに仕事を進めたりすることができるのです。
 縁の下の力持ちという表現が的確ではないかもしれませんが、メジャーリーグで活躍しているダルビッシュ有選手は、2023年3月に開催されたWBCでは影のMVPと称されるほど、チームに貢献しました。メジャーでのシーズン開幕を控えていて調整も難しいなか、2月の宮崎合宿からチームに参加し、後輩投手たちに球種などをはじめ自分の持っている技術や情報を惜しみなく伝授する姿は、頼もしいものでした。…(一部省略)…
 侍ジャパンにとってダルビッシュ選手は、陰になり日向になりチームを支えた貴重な「与える人」だったといえるでしょう。そして、チームメイト全員がダルビッシュ選手に感謝の念、尊敬の念を抱いたことは間違いありません。
 私たちは「縁の下の力持ち」への感謝を忘れてはなりません。そして、その感謝を言葉にして伝えるべきです。その感謝の言葉は、「縁の下の力持ち」の励みとなり、活力になるはずです。そして、感謝を伝えてくれた人への感謝へつながるでしょう。そうした「感謝し、感謝される」ことが素敵なご縁を生み、人間関係や仕事、人生が好転していくと私は信じています。

 相田みつをさんの『おかげさん』の中に「見えないところで」というタイトルの文章があるのですが、その最後に「どんなものにでも、一番大事なところは表面に出ないものですから…」と書かれています。
 また、フランスの作家で飛行士、サン=テグジュペリ作『星の王子さま』の一節に「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」との言葉があります。
 私たちは目の前に見える目立つもの、できあがったもの、数値など、自分に都合のいいところばかりに目がいき、本当に大切なことに気づかなかったり、「縁の下の力持ち」として活躍している人やそこにたどり着くまでの苦労に目を向けないことがあります。
 目に見えないことに気づく感性を持ちたいものです。目に見えているものの裏にある見えないものに気づく心を持ちたいものです。陰で支えてくれたり、助けてくれたり、力になってくれたりする人の存在に気づき、きちんと感謝できる人でありたいと思います。それは「人」であれ「もの」であれ同じです。そして鹿島さんがおっしゃっているように、その感謝を言葉にしてきちんと伝えられる人でありたいと思います。
 私たちが、互いに「感謝」できる関係であれば、それが互いの成長にも繋がるし、気持ちよく日々過ごせるのではないかと思います。まずは、大人がその模範を示さなければと思う私です。