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【10月17日】私の母[その2]

公開日
2023/10/17
更新日
2023/10/17

校長のひとりごと

(※10月16日の「ひとりごと」の続きです)
 合唱コンクール本番が近づき、子どもたちの練習に取り組む姿は、さらに真剣さと一生懸命さを増していました。目の輝きが違うのです。子ども達が生活ノートや班ノートに書いてくる合唱への意気込み、母への励ましやあたたかい思い、友達への思い、何より子どもたちのひたむきな姿は私を毎日感動させてくれました。そして感謝の気持ちでいっぱいでした。
「なんて、素敵な子どもたちなんだろう。こんなにも生き生きとして、一つ一つの言葉を大切にし、何より友を思い、人を思い、心を込めて歌っている」
 私は、母へのメッセージカードのお返しに、子どもたちへのメッセージカードを渡すことにしました。合唱コンクールの前夜、それまでの練習の様子を思い出しながら、一人一人に私の思いを書きました。全部のカードができあがったのは朝でした。コンクール当日の朝、そのカードを子どもたち一人一人に渡しました。私の書いたメッセージを読み、嬉しそうに微笑む子どもたち。そのカードを大事に胸ポケットにしまい「ありがとうございました。絶対、金賞とります!」という子ども達を心から誇らしく思いました。そして、私を驚かせたのが、パートリーダーの一人の女の子が朝までかけてクラス全員にメッセージカードを書いてきていたことです。あれだけリーダーとして頑張ってきた上に、さらにみんなへ素敵なメッセージカードを書いてくる…改めて子どもってすごい!と感じた瞬間でした。
 本番前、最後の練習の『春に』を聴いたとき、私は胸がいっぱいになりました。最後の練習を終え、涙を流している子もいました。私は音楽の専門家ではありませんが、もう十分“金賞”以上の歌になっていると感じました。これだけ全員が心を込めて素敵な顔で歌っているのだからもう賞は関係ないと思いました。そして、本番も心のこもった感動的な『春に』を歌ってくれました。ステージを降りるとき、自分たちの歌に感動したり、やりきった満足感で泣いたりしている子たちもいました。
 結果は見事“金賞”…歓喜と涙の閉会式でした。閉会式が終わり、教室で待っていた子どもたち。私が教室に入ってくるなり大歓声…そして、「先生を胴上げしよう!」と、私の胴上げまでしてくれました。私にとって人生初の“胴上げ”でした。思いも寄らない胴上げにまたまた感動してしまいました。
 その次の日、母は無事退院しました。そして、その約1週間後の「春日市合唱祭」。母は父と一緒に春日市のふれあい文化センターに来ることができました。会場で私が両親を紹介すると、子どもたちは大喜びでした。目をキラキラと輝かせ、「こんにちは!」「こんにちは!」「具合はどうですか?」「今日は、ありがとうございます」「一生懸命歌うので、よろしくお願いします!」「私たちの歌、しっかり聴いてください」…。子どもたちの笑顔と声かけに、私の母はとても嬉しそうでした。
 そして本番、子どもたちは学校での合唱コンクールのとき以上に伸び伸びとそして素敵な表情で『春に』を歌い上げました。本当に呼吸までぴったりの一体感のある素晴らしい合唱でした。歌い終えて客席に戻ってきた子どもたち。私の母に「私たちの歌、どうでしたか?よかったでしょ?」と誇らしげに聞く子どもたちの表情は満足感でいっぱいでした。私の両親は、子どもたちが全身全霊を込めて歌い上げた素敵な『春に』を聴くことができました。会場を出るとき母は、私にこう言いました。
「素敵な子ども達やね〜。あんた、こんなに素敵な子どもたちに出会えるなんて幸せやね!子どもたちに感謝しないとね!」と。母のその言葉と笑顔を今も忘れることはできません。

(※私の母[その3]に続く)