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【11月13日】心が人を打つ

公開日
2023/11/13
更新日
2023/11/13

校長のひとりごと

 昨日の西日本新聞のコラム『春秋』からです。

 校門のサクラの葉は色づき、昼前の静かな校庭で鉄棒や雲梯(うんてい)は出番を待つ。校舎から子どもたちの高らかな歌声が聞こえてきた。合唱コンクールの練習のようだ。世界を一変させた新型コロナの5類移行から半年。学校や地域で、思い切り声を響かせる喜びが4年ぶりに戻ってきた。
 音楽に興味を持ったきっかけは兄弟との合唱だった、と小澤征爾(おざわせいじ)さんが以前語っていた。4兄弟は幼い頃、教会の日曜学校に母と通い、賛美歌を歌った。家に帰ると長男が音頭を取り、賛美歌のパートを分けて4人で歌を楽しんだ。後に三男は世界的指揮者として音楽を究(きわ)める。母の古希祝いに4人は歌を贈ったそうだ。音楽はまず声から出発する、楽器は全部人間の声の代理であると小澤さんは言う。音を楽しむ、と語られることが多い「音楽」の語源を調べると、音は歌声、楽は楽器を意味する。音楽の始まりは歌声だ。
 学校行事に参加し、子どもたちの真っすぐな歌声に涙した人も多いだろう。合唱はなぜこれほど人の心をとらえるのか。作曲家の池辺晋一郎さんはこう考えている。合唱は皆が一緒に歌いながら、心の中では手をつなぎ、肩を組んでいるような気持ちになる。だから人を勇気づけたりメッセージを伝えたり、聴く人に強く訴えかけるのだと。
 年末に向け、各地で「第九」の練習が本格化している。声を合わせる喜びを新たに、歓喜のハーモニーが響く冬になる。

 小澤征爾さん(88歳)といえば、1973年からボストン交響楽団の音楽監督を30年ほど務め、そののち10年近くウィーン国立歌劇場音楽監督を務め、「世界のオザワ」と言われるほどの世界的に著名な指揮者です。「アスネタ!」というサイトによると…
 小澤さんはもともとピアニストを目指していました。が、趣味のラグビーで指を骨折してその夢をあきらめます。その後、14歳のときにロシアのピアニストであるレオニード・クロイツァーが、ピアノを演奏しながら指揮する姿に感動し、指揮者になりたいと考えました。そこで、指揮者を志し、音楽教育者の齋藤秀雄さんに弟子入りします。斎藤さんの厳しい指導に逃げ出すようなこともありましたが、小澤さんの才能を見抜いていた斎藤さんは技術等を徹底して教え込みます。そんな中、持ち前の行動力と交渉術によって、小澤さんはフランス留学を果たし、指揮者の登竜門である「ブザンソン指揮者コンクール」に出場し、見事“優勝”の栄冠をつかみました。その後も一流の音楽家たちのもとで成長し、「世界のオザワ」になっていったそうです。小澤さんはたくさんの名言を言われてきましたが、その一部を紹介します。

◆技術の上手下手ではない。その心が人を打つ
◆本当の音楽をしていれば、絶対に報われないということはない
◆集中力っていうのは、天才のものじゃないんだ。訓練だ
◆言葉は全然違うけれども。あいうえおとABC、フランス語とドイツ語、イタリア語と日本語、韓国語と中国語では、全く違う感情があったり、悲しみがあったり、泣き方があったりするけれど、もっと底まで入ると、人間の共通面があると思うんです。言葉なんかを超えた、と信じているわけ、僕は。だからこうやって、指揮者をやっているんです。

 このような小澤さんの言葉から、「努力がいかに大切か」「音楽は、“心”が大切である」「音楽は国境や言語の違いを超える」ということがわかります。また、小澤さんには、人を引きつける不思議な魅力があるそうです。小澤さんのことを調べると、人間的な魅力や人間性がどんな世界であっても大切なのだと改めて知ることができます。
 それにしても、“音楽”ってやはりいいですよね!そして、そこにある“心”や“気持ち”がいかに大切か…。歌も心、音楽も心…心は届く、心は通じるということでしょうね。