【12月4日】静かに考える
- 公開日
- 2023/12/04
- 更新日
- 2023/12/04
校長のひとりごと
「暮らしの手帖」前編集長でエッセイストの松浦弥太郎さんの著書『あたらしい あたりまえ。』に「まずは自分で考える」というタイトルで次のことが載っています。
「わからない」と思った瞬間、あなたの目は、どこに向けられますか。
「これはなんだろう?」と感じた瞬間、あなたの手は、どこに伸びますか?
もしかすると、首を横に向けて、隣の人に尋ねているのではないでしょうか。あるいはパソコンのマウスに手を伸ばし、インターネットの検索ページを開いているのではないでしょうか。もしそうなら、たいそう危険なことです。仕事や暮らしの中はつねにわからないことだらけです。そんなときすぐ人に聞いてしまうと、頭が退化してしまいます。インターネットも同じ事。「考える」という行為を省略して、すぐさま外に答えを求める習慣がつくと、心があくせくしてきます。
まだるっこしいプロセスはすっ飛ばし、できるだけすばやく、文字通り今すぐに、一番の近道で答えにたどり着く。こんな調子で日々を送っていたら、ちょっとでも「わからない状態」が続くと、いらいらするでしょう。仮にその答えが間違っていたら、「○○さんの言ったとおりにしたのに」あるいは「インターネットでちゃんと検索したのに」と、自分で決めたことの責任転嫁をするかもしれません。自分で考えず、人の考えを鵜呑み(うのみ)にして、いらいらしたり誰かのせいにしたり…こんなひどい人間になってしまいかねない習慣は、さっさとやめたほうがいいのです。
「まずは自分で考える」
これをスローガンにして、毎日自分に言い聞かせましょう。わからなかったら、まずは自分一人で、静かに考えること。とことん考えぬくこと。時間はかかりますが、理解は確実に深くなるはずです。
スマートフォンやタブレット、AIアシスタントなどがたいへん普及しており、「検索」することが誰でも手軽にできるようになりました。先日のひとりごとでも述べた人工知能のチャットサービスまで出てくれば、なお一層、簡単に調べることができ、より詳しく最新の情報を教えてくれます(間違いもありますが…)。私もパソコンやスマホで調べることが多々あります。しかし、たいへん便利になった世の中であっても、「考える」「考えぬく」という過程はとても大切だと改めて思います。
子どもたちの勉強だって、わからないからとすぐに答えを見てもなかなか力はつきません。試行錯誤して考えた分、わかったときの喜びもあるし、そのことが記憶にもよく残ります。時間無制限とはいかないかもしれませんが、「自分一人で考える」「自分がとことん考えぬく」ということを忘れてはいけないということを松浦さんは教えてくれています。もちろん、便利なものを「使わない」のではなく、「上手につきあう」「正しく向き合う」ことが大事なのでしょうね。