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【2月9日】〇〇効果

公開日
2024/02/09
更新日
2024/02/09

校長のひとりごと

 今朝の西日本新聞のコラム『春秋』からです。

 「きれいにご利用いただきありがとうございます」。コンビニのトイレで見かけるこの張り紙に「いやこれからご利用です」と突っ込みたくなる方は、結構おられるはず。それでもあちこちで見かけるから、この「先回りの感謝」効果はきっと、相当大きいのだろう。コンビニが店のトイレを客に開放するようになったのは1997年という。この年、全都道府県への出店を果たしたローソンが始めている。コロナ禍の2020年4月には、感染防止のために使用休止を発表した。すると運転手さんたちを中心に「それは困る」の大合唱になった。間もなく緊急時は使用可、と方針転換した。もはや社会インフラとして完全に定着している。
 「便利」と言う意味の英単語が元になったこの業態が日本に登場して半世紀。トイレに限らず、公共料金の支払いから宅配便、銀行業務まで、店は暮らしの便利の目印になった。今年は能登半島の地震で休業を強いられた店もある。そこに再び明かりがともるのは、被災地が日常を取り戻す象徴的な一歩に見えてくる。
 KDDIがローソンの経営に参画するという。得意とする通信技術を使ったリモート接客の導入などで、店舗のデジタル化を進めるという。災害時の機能強化も期待できるそうだ。発表記者会見では「未来のコンビニを実現する」という言葉があった。一歩前へ、だろうか。新たな便利のかたちを見てみたい。

 コンビニエンスの元々の意味は、「好都合。便利。また、便利なもの。手間がいらない重宝なもの」…本当に多くの方が利用され、緊急時も含め私たちの生活に欠かせないほどのものとなっているコンビニ。ローソンの親会社である三菱商事とKDDIがローソンの共同経営をするということを私は昨夜のニュースで知りました。KDDIの社長さんは「通信の力をフルに活用して未来のコンビニを実現する」とおっしゃっていました。どんなコンビニになっていくのか楽しみな気がします。
 私が、今日のコラムで気になったのは、前半に書かれていた「きれいにご利用いただきありがとうございます」という言葉です。以前は、コンビニをはじめお店などのトイレには「トイレはきれいに使いましょう」とか、「トイレを汚さないように使ってください」、もっと命令口調のような表現もあったように思います。しかし最近は、ほとんどのお店が「きれいにご利用いただきありがとうございます」のような表現になっています。
 コラムの中には「先回りの感謝効果」とかかれていますが、「ナッジ理論」を利用しているともいわれます。ナッジ理論とは、“ちょっとしたキッカケ”によって人の行動を劇的に変えたり、誘導するというものだそうです。「ナッジ」とは“肘で軽く突く”という意味。人は基本的に物事に対し「何かした方がいい」「こうした方がいい」と思うことが多いのですが、つい忘れてしまったり、先延ばしにしたりする場合が多いのが実情です。そこで「ナッジ効果」が有効に働くといわれています。低コストで大きな効果をあげることができ、かつ強制ではなく自発的に望ましい行動を選択するよう促す手法であることから、世界中で応用されているようです。
 実は、これとは別に「きれいにご利用いただきありがとうございます」には、様々な効果が心理的にも働いて、「トイレをきれいに使ってください!」などよりも効果があるといわれています。
◆「ピグマリオン効果」→相手に期待することで、相手の行為が変わり成果が上がる
◆「ラベリング効果」→相手に“トイレをきれいに使う人”とレッテルをはることで効果が上がる
◆「エンハンシング効果」→相手を褒めることで、相手のやる気が上がるという心理現象
◆「返報性の原理」→他人の好意や感謝(この場合はありがとうございますという感謝の言葉)に対してお返しをしなくては考える心理現象
…などなど。
 そう考えると、とても人間の心理をついた絶妙な言葉、表現であるということになります。私たちの子どもたちへの(大人へも…)声かけも、「○○しなさい!」ではなく、「いつも○○してくれてありがとう」「あなたが○○してくれるからすごくありがたい」「○○してくれるとすごく嬉しい」…など、使う言葉や表現の仕方で、受け止め方が変わり、行動も変わっていくのではないかと思います。