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【2月13日】夕日

公開日
2024/02/13
更新日
2024/02/13

校長のひとりごと

 先週2月6日に指揮者の小澤征爾さんが亡くなったことが報道されていました。11日の朝日新聞のコラム『春秋』にとりあげられていました。

 小澤征爾さんの名を冠し、夏に長野県松本市で開かれる音楽祭には国内外のクラシックファンが集う。チケット入手も困難な音楽祭は1992年に始まった。当時学生だった私は地元テレビ局のアルバイトとして密着取材に同行した。多くの取材陣に囲まれながら、小澤さんは私のような若いスタッフにも気さくに声をかけてくれた。オーケストラを前にすると、身にまとう空気は一変。鋭い目で奏者を見つめ指先で音を高めていく。素人の学生にもすごさは伝わった。
 恩師の斎藤秀雄氏をしのびスタートした音楽祭には第一線の奏者が世界各地から駆け付け、終わると再び各地へ散っていく。いま多くの日本人が、アジア人が世界のクラシック界で活躍する礎を小澤さんが築いた。
 指揮者として何がすごいのか。村上春樹さんは、指揮する姿の「比類なき美しさ」に魅了された。小澤さんが指揮するオペラは歌がとてもきれいに聞こえる。その理由を尋ねると「歌手の発声の子音と母音のあいだに、すーっとオーケストラの音を入れればいいんです」と明快に答えた。ほとんど奇跡に近いことを「すらりとやってのけられる十本の指が、美しくないわけがないですよね」と村上さんは書いている。
 チャイコフスキーの弦楽セレナードが鳴り響く時、情熱的に指揮棒を振るマエストロの姿を思い浮かべるファンは多いだろう。万雷の拍手の中、最後の休符が打たれた。

 小澤征爾さんといえば、米ボストン交響楽団やウィーン国立歌劇場の日本人初の音楽監督を務めるなど国際的に活躍し、「世界のオザワ」として人気も高く、文化勲章も受賞された世界的に著名な指揮者です。今回のことを各国メディアも「カリスマ的巨匠」「クラシック界の魔術師」が亡くなったと大きく報道されていたようです。また、小澤さんの温かい人柄やその高い人間力を世界中の人が褒め称えています。10日の西日本新聞の記事にはこんなことが書かれていました。

 ウィーン楽友協会の「黄金のホール」で開かれたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会でのこと。会場は満席で、立ち見があふれた。終演後、聴衆はこのアジア人音楽家に惜しみない拍手と「ブラボー」を送った。その理由を、興奮気味の初老の女性が解説してくれた。「だって、マエストロ・オザワのように、温かい人柄を音楽で表現できる人が他にいますか?」
 小澤さんは「温かさ」について、歌劇場の音楽監督室でしみじみと語ってくれたことがある。「聴く人を感動させる美しい音楽は、沈んでいく夕日を見たときのような悲しい味がするんです」2001年、東京都内の病院で難病の子どもたちのために小さな音楽会が開かれた。小澤さんは旧友らによる合唱団を指揮し、童謡「赤とんぼ」を歌った。「夕やけ小やけの…」。小澤さんは大粒の涙をポロポロとこぼして泣いた。人情家で、とにかく涙もろい人だった。「苦しい闘いをしている子どもに会ったりすると『音楽なんてやっていてもしょうがないじゃないか』と思うんです。でも、一生懸命に聴いてくれる一人一人がいるじゃないですか。それだけで音楽をする意味がある」…

 この記事を読むだけでも小澤さんの人柄が伝わってきます。温かで情熱的な人柄、明るくて気さくな人柄、そして努力家で行動力もある小澤さん。きっとそれらのすべてが一つになって世界最高の指揮者となられたのだと思います。ひとりごとで今までもたくさんの凄い方々を紹介しましたが、やはり「人間性が素晴らしい」「人間力が高い」ことが、超一流になるためにも必要なことなのだと思います。
 小澤征爾さんのご冥福を心よりお祈りいたします…