【1月23日】不完全であること
- 公開日
- 2025/01/23
- 更新日
- 2025/01/23
校長のひとりごと
今朝の西日本新聞のコラム『春秋』からです。
51歳になった背番号「51」が、アジア出身の野球選手として初めて米国の野球殿堂入りを果たした。メジャー通算3089安打を誇るスター選手にまた一つ加わった大きな勲章である。殿堂入り確実とされた中での注目は「満票」かどうか。票の獲得率は99.7%。1票足りなかったが、記者会見では笑顔を見せた。「足りないのはすごく良かった。不完全であるというのはいいなって。生きていく上で不完全だから進もうとできるわけです」。イチローさんらしい受け止め方だ。
年末のテレビ番組で松井秀喜さんと対談していた。最近の大リーグがいかにストレスを感じる「退屈な野球」かを2人は憂えていた。投げる球の回転数や軌道、打球の角度や速度が手元のタブレットで瞬時に確認できて、その数字を重視するデータ依存野球が浸透した現状。それによって、打順の意味や選手の役割が意味を失いつつあるという思いが2人にはあった。
久々に訪ねた母校、愛工大名電高には最新鋭の機器がそろっていた。甲子園を目指す後輩に、データの活用も必要だと前置きした上で伝えた。「目に見えてないところを大事にしているか。気持ちがどう動いたか、感性を大事にしてほしい」。引退会見で「頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつある」と語ったのは6年前。感性、間合い、駆け引き。そんなものを求めるのは、もはや旧世代のノスタルジーか。
(※ノスタルジー:過去のなつかしい思い出や時間をなつかしむ気持ちや思い)
今日もイチローさんの話題になってしまいました。昨日の記者会見で、満票での殿堂入りではなかったことの感想を聞かれたイチローさんの言葉が非常に印象に残ったので、どうしてもそのことにふれたくなりました。記者の方々も放送していたキャスターなども「あと1票で満票だったのに…」「誰がいれなかったのか?」「本当に残念…」などのコメントや感想が多かったのにもかかわらず、イチローさんは「足りないこと、不完全なことは良いこと。不完全だからこそ、進もうとする。完全になりたいと努力し向上しようとする…」という意味のことをおっしゃっていました。本当に「考え方」が素晴らしいと思いました。3学期の始業式で私が紹介した稲盛和夫さんの“成功の方程式”の中でも、「考え方」がいかに大切であるかを話しました。まさにイチローさんのそのような考え方が、とてつもない「努力」を生み、「継続」して取り組んでいった結果が、あの偉大な記録をつくり、今回の殿堂入りへと繋がったのだと改めて思いました。
また、コラム後半の部分については、そのイチローさんと松井さんの対談をすべて見たわけではないのですが、“目に見えていないところ”“感性”を大切にすることは私も非常に共感します。情報化、デジタル化が急速に進み、スポーツ界でも「データ野球」「データバレー」などが当たり前になっています。便利なこと、役に立つことがたくさんあります。しかし、それを活用するのは“アナログ”な人間である私たちです。だからこそ、感性や感覚を大切にし、そしてイチローさんの言う「目先のことだけにとらわれず、目に見えないことを大事にしているか?」を心に留めて、毎日を充実させたいと思います。