【5月8日】読書と国の未来
- 公開日
- 2025/05/08
- 更新日
- 2025/05/08
校長のひとりごと
先日、テレビをつけると安藤忠雄さんの特集があっていました。それによると、安藤さんは、子どもたちに本を読んでほしいと、全国に現在4ヶ所(中之島・遠野・神戸・熊本)、「こども本の森」と称した図書館を寄贈されているのです。2025年夏頃に松山市、2026年夏頃に札幌でも開館予定とのこと。さらには、台湾や韓国、バングラデシュ、ネパールなどでも計画されているようです。
安藤忠雄さんと言えば、世界的にも有名な建築家で数々の名誉ある賞もとられています。代表的作品には、「表参道ヒルズ(東京都)」「渋谷駅(東京都)」「国際子ども図書館(東京都)」「大阪府立近つ飛鳥博物館」「淡路夢舞台(兵庫県)」「地中美術館(香川県)」「水の教会(北海道)」「フォートワース現代美術館(アメリカ)」…と日本各地はもちろんのこと、欧米にもたくさんの作品があります。そんな安藤さんと、世界で初めてiPS細胞の作成に成功しノーベル生理学・医学賞を受賞された京都大学教授である山中さんの対談が、「読書は国の未来を拓く」というタイトルで、人間学を学ぶ月刊誌『致知』の特集で載っていました。対談は、安藤さんが大阪市に寄付し、山中さんが館長を務める「こども本の森 中之島」で行われました。
山中さんが「子どもたちのための図書館をつくろうと思った理由」を安藤さんに問うと、こう答えておられます。
「一つは、本を読まない子が増えてきている状況を何とかできないものかと。もう一つは、今日まで自分を育ててくれた地元の大坂や社会、そして日本に対して何か恩返しがしたいという思いです。私が尊敬するアメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは莫大な財を成し、66歳で引退した後、社会還元としてカーネギー・ホールをはじめとする文化施設と共に、世界各地に図書館を寄付しました。その数何と2500か所。これにはかなうべくもありませんが、私も手の届く範囲で子どもたちのための図書館をつくろうと思ったんです。私自身、読書体験を通して『人間の心の成長にとって、最高の栄養は本である』という実感があります」。
また、山中さんは読書の大切さについてこう述べられています。
「読書は二つの意味で非常に大切だと考えています。一つは安藤先生もおっしゃった通り、特に大作を読むことは著者との格闘ですし、時間もエネルギーもかかります。でも、その分だけ集中力、忍耐力、持続力、探究心といった長い人生を生き抜くための基礎体力が身につく。もう一つは、自分だけでは経験できない他の人や過去の人の生き方や価値観を学ぶことができる。自分もかくありたいという目標を与えてくれる。それが向学心や向上心に繋がっていくんです」。
さらに安藤さん、山中さんはそれぞれこう話されていました。
「読書習慣を取り戻すためには教育の問題を真剣に考えないといけません。親が子どもに、先生が生徒に、どういう教育をするか。アンドリュー・カーネギーは15歳頃、電報配達の仕事をしながら、そのすき間時間に本を読んで勉強したんです。自分が今日まで働くことができたのはそのおかげだと行っています。やはり十代のうちにおおくの本を読まないとダメ。その時期に読書することで根が養われ、心の広く豊かな人間に育つんです。…(後略)…」
「私自身も子どもの頃から本を読むことを通して、多くのことを学んできました。読書体験がなければ医学を志していなかったかもしれません。幼少期からたくさんの本に触れ、読書体験を積むことは、その子の将来、ひいてはこの国の未来にとって大きな財産となります。国の未来は一人ひとりがつくりますからね。読書を通じて豊かな創造力を持った元気な子どもたちが日本に育っていくことを心から願っています」。
子どもの頃、読書をあまりしてこなかった自分を反省しつつ、これから少しでも自分自身が読書をすること、そして、子どもたちにもその大切さを少しでも伝えられたらと思います。
(ひとりごと 第1011号)