【9月6日】無私道
- 公開日
- 2023/09/06
- 更新日
- 2023/09/06
校長のひとりごと
雑誌『致知』の対談で侍ジャパン(野球)の前監督、栗山英樹さんと臨済宗円覚寺派管長(最高位の役職)、横田南嶺[よこたなんれい] さんの対談記事が載っていました。とても興味深く読ませていただきました。その中のお二人の対談の一部を抜粋します。
横田
「栗山監督の本を読んで感動したことの一つは、『野球は無私道(むしどう)』という言葉です。私心を去ることによって、いま言われたような大いなる意思と一つになっていくんでしょうね。こうなってくると、我々の仏道修行と同じです」
栗山
「ですから、管長(横田さん)の本を一所懸命読んで勉強させていただいています。野球って運の要素も強いんです。打ち損なった打球が間に落ちて点が入るとか。運をいかに味方につけるかというのが一つのテーマで、それには結局生きざましかないなと。周囲のために尽くして生きている人には神様や天が応援してくれる」
横田
「『不平等を覚えるのが野球の使命だ』ということも書かれてあって、深く納得しました。監督には申し訳ないけど、私はこれまで野球に対してあまり好感を持っていなかったんですね。芯(しん)に当たった打球でも捕られたらアウトだし、逆にろくな当たりでもないのにヒットになる。これは納得がいかなかった。しかし、ここで不平等を知るんですよね」
栗山
「同じような努力をしても、片やスター選手になるし片やベンチにも入れない。世の中ってそういうものじゃないですか。世の中に出ると理不尽なことはいっぱいあって、それを我慢して次に進んでいく力を、野球を通して覚えていくことが大事だと思います。不運だなで終わるんじゃなくて、不運にも意味があると。そうすると、自分が前に進みやすくなる。例えば『ああ、きょうは朝ちゃんと挨拶できていなくて、相手に嫌な思いをさせちゃったかな』とか、客観的に自分の行動を省(かえり)みて何か気づいてくれたらいいなと思っているんです」
どんなことであっても、頑張れば成功するわけではありません。お二人がおっしゃっているように理不尽なことや思うようにいかないこと、認められないことが山ほどあります。それでも私たちは前を向いて進んでいかなければなりません。栗山さんの言う「不運にも意味がある」もそうだし、生前の母が私に、「いいことも悪いことも起こることにはすべて意味がある。すべて自分のため…と思ってまた頑張ることが大事」と言っていました。心の狭い私は、そう簡単にそんなふうに思うことができませんでしたが、少しでも前を向けるよう自分に言い聞かせ、多くの方のおかげで、今があります。
栗山さんが「世の中の理不尽さや、それを乗り越えて前に進むことの大切さを野球を通して覚えていく」とおっしゃっています。野球だけではなくどんなスポーツであっても、またスポーツ以外であっても、そして仕事であっても、苦しい思いやきつい思いを乗り越えることによって、人として成長できるのだろうし、自分の生き方の糧になっているのだと思います。