【5月27日】生きる
- 公開日
- 2024/05/27
- 更新日
- 2024/05/27
校長のひとりごと
5月25日(土)は、市内小学校の運動会でした。私は大城小、大野北小、大野東小の3校の運動会を参観させていただきました。子どもたちが競技や演技に一生懸命に取り組む姿は、やはり素晴らしいなと感じながら帰りました。小学校の先生方、そして保護者の方々が愛情一杯かけて育てていただいた子どもたちが毎年中学校に入学してきます。その思いを引き継ぎ、さらに子どもたちの成長の支援ができるよう中学校でもしっかり頑張っていかなければと思います。
さて、5月25日の西日本新聞コラム『春秋』からです。
薫風と緑のシャワーが快い5月。福岡市の福岡アジア美術館で開催中の「谷川俊太郎 絵本★百貨店」(6月16日まで)は言葉のシャワーが心地よい。92歳の詩人は半世紀以上、多彩な絵描きや写真家と200冊に及ぶ絵本を作った。そのうち「ままです すきです すてきです」「もこ もこもこ」など約20冊を取り上げる。原画や映像と一緒に言葉が弾む。
谷川さんは13歳で東京大空襲に遭い、たくさんの焼死体を見た。戦争をテーマにした作品も多い。<こどもと こどもは せんそうしない せんそうするのは おとなと おとな>。平易な言葉と絵で人間の業[ごう:人間の身・口・意によって行われる善悪の行為]をずばりと言い当てる。デジタル空間や交流サイト(SNS)などで言葉が氾濫する時代、「できるだけおしゃべりをしないでおきたい、無口でいたい」。歌人俵万智さんとの対談で語っている。「言葉を疑っていた」とも。
会場に置かれた絵本「ともだち」は、イラストレーターの故 和田誠さんの温かい絵が詩と響き合う。<ともだちって いっしょに かえりたくなるひと><ことばが つうじなくても ともだちは ともだち>。
中東の紛争地でこの瞬間にも犠牲になる子どもたちが重なってくる。<このこのために なにを してあげたら いいだろう。あったことが なくても このこは ともだち>。選び抜かれた言葉が、鈍感になっていた心に突き刺さる感覚はずしんと心地よい。
ある報道番組で、谷川さんとキャスターの方の対談がありました。その中で、谷川さんはこんなことをおっしゃっています。
「今、世の中には言葉が氾濫しています。しかもフェイクニュースとか認められていればそれが『現実』みたいになってますよね。だから、できるだけ少ない言葉で詩を書いてみたい…」。
それで新しい詩集をつくられました。例えば、「問いがそのまま未来の答え」「言葉ができないことを音楽はする」…などの短い詩を集めた詩集です。谷川さんの詩は奥深く様々なことを考えさせる詩です。半世紀ほど前につくられた教科書などにも載っていた「生きる」という詩があります。東日本大震災で再度注目されました。
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと…(後略)
谷川さんはこの「生きる」という詩について、「これはただ単に“生きる”、“生きている”ということを抽象的に表現していただけであり、何も主張をしていない詩である。ただ、そのことが、人々の心に訴えるものがあって注目されたのではないか」と…。
また、谷川さんの絵本で「へいわとせんそう」というものがあります。ページをひらくと左右で絵と言葉を使い対比させながら「へいわのボク せんそうのボク」「へいわのワタシ せんそうのワタシ」「へいわのかぞく せんそうのかぞく」…と続きます。その中でまったく左右同じ絵のページがあります。そのページにはこう書かれています。「みかたのあかちゃん てきのあかちゃん」とかわいらしいまったく同じ赤ちゃんの絵が描かれています。「生まれたときは皆同じ。なのに戦争は起こる。平和とは何か…」、谷川さんは、平和を願い、今も問い続けられています。そしてこんなこともおっしゃっていました。
「ただ平和だけが素晴らしいかというとそうでもない気がする。なぜかというと、平和な世界で、気候変動であったり、格差が生まれたりする問題もある。平和であるがゆえに欲望を追求したりもする」。
平和であることはとても大切なこと。しかし、平和であっても、それに甘えるのではなく、互いのことを考え互いの幸せを考え行動することがいかに大切かを谷川さんは教えてくれています。
皆さんはどう感じましたか?