【11月21日】生きている
- 公開日
- 2024/11/21
- 更新日
- 2024/11/21
校長のひとりごと
昨日の読売新聞のコラム『編集手帳』からです。
対談集で語っていた。詩人の谷川俊太郎さんは、「小生意気な子供」だったという。風邪を引き、母に医者に連れていかれた。診察室の薬やメスの入っている戸棚へと歩き回り、「これなあに?」と看護師に聞いたりしていた。家に帰ると、生意気だ、こましゃくれたことをお医者さんに言うのはやめなさいと叱られた。「そのときにオレね、これからウソをつかなければならないってことがわかったわけですよ」(『ららら星のかなた』中央公論新社)。幼い心のまま、行儀をただそうとする母の教育をウソと受け止めている。繊細な感受性がうかがえる。この世は正直な自分を許さない。いい子にすることがウソと言わねばならないほど悲しかったのだろう。〈あの青い空の波の音が聞こえるあたりに/何かとんでもないおとし物を/僕はしてきてしまったらしい/透明な過去の駅で/遺失物係の前に立ったら/僕は余計に悲しくなってしまった〉(「かなしみ」)
谷川さんが92歳で人生の幕を閉じた。言葉遊びの楽しい詩もあれば、おなじみのアニメの主題歌もある。日本を代表する詩人は大衆のそばにいた。
谷川俊太郎さんが19日、亡くなられたことが報道されていました。谷川さんといえば、私たち世代ではとても懐かしく、多くの人が一度は聴いたことがある「鉄腕アトム」の主題歌「♪空をこえて~ラララ 星のかなた~…」が有名です。私は、二十数年前のクラスで、谷川さんのデビュー作の詩集のタイトルである「ニ十億光年の孤独」という合唱曲を歌い、金賞をとりました。それもとても思い出に残っています。「♪人類は小さな球の上で 眠り起き そして働き ときどき 火星に仲間を欲しがったりする…ネリリし キルルし ハララしているか…」など、とても興味深い詩でした。それを学級で解釈し、表現について考え歌ったことをよく覚えています。谷川さんの詩で有名なのが「生きる」です。
生きているということ いま生きているということ
それはのどがかわくということ 木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ いま生きているということ
それはミニスカート それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス それはピカソ
それはアルプス すべての美しいものに出会うということ
そして かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ いま生きているということ
泣けるということ 笑えるということ
怒れるということ 自由ということ
生きているということ いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ いまいまが過ぎてゆくこと
生きているということ いま生きているということ
鳥ははばたくということ 海はとどろくということ
かたつむりははうということ 人は愛するということ
あなたの手のぬくみ いのちということ
いろいろなことを考えさせられる詩です。「谷川俊太郎 詩の扉」というサイトには次のようなことが載っていました(抜粋要約)。
未来に向かって“生きる”ためには今「生きている」ということが必要です。そして、5連から成るこの詩は、第1連は生きているがゆえの自然な体の反応があるということ、第2連は生きていることは美しいものや感動することに出会うこと、第3連は生きていることは様々な感情が芽生えそれを表現するということ、第4連は生きていることは他の生き物や他者そして世界(地球)を意識すること、第5連は生きていることは命そのものであることを表現しているのではないかと思います。そして最後の「人は愛するということ あなたの手のぬくみ いのちということ」の部分から、谷川さんがまさに愛する相手の存在をかみしめているかのようである
と書かれていました。皆さんはこの詩を読まれて、どのように感じましたか?
谷川俊太郎さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。