【5月1日】僕の“宝物”
- 公開日
- 2025/05/01
- 更新日
- 2025/05/01
校長のひとりごと
「第55回体育祭」の結団式、全体練習が始まりました。実行委員長の竹之内凜さんを始めとする実行委員の皆さん、係長の皆さん、リーダーの皆さんはキラキラと目を輝かせ、多少の緊張感もありながら自己紹介や意気込みを伝えていました。これから、全校生徒の意欲がさらに高まり、一つ一つの練習に全力で取り組んでほしいと思います。
全体練習が終わり、最後にクラスごとに「大縄跳び」の練習をしていました。大縄跳びは、回し手の回し方と回すスピード、跳ぶ人の並び順と跳ぶタイミングなど基本的なことを全員が理解すること、そして何より全員で心を一つにして「跳びたい!」という思いが合わさったときに驚くほど跳べるようになります。私が担任をしているときは、スタートは「1回とか2回」しか跳べない1年生であっても、「うちのクラスは100回を目標にしよう!」と言います。そうすると子どもたちは決まってこう言います。『先生!絶対無理です!』と。そこで、跳べるようになるためのコツや方法をしっかりと教えます。しかし、どんなに理論や作戦があったとしても結局は「心、気持ち」がなければ跳ぶことはできません。一人でも集中していない人がいたり、やる気のない人がいれば、もちろん跳べません。ですから、様々な話をしながら気持ちがひとつになっていくようにしていきます。すべてがひとつつになったとき、1年生であっても連続で100回近く跳べるようになります。3年生ともなると200回を超えてきます。ものすごくきついはずなのに笑顔で跳び続けます。そして「感動」が生まれます。子どもたちが言います。「先生、やればできるね!」「心がひとつになると跳べるね!」「私たちのクラス、最高!」…。これこそが大縄跳びの醍醐味です。練習すればするほど跳べるようになります。そしてクラスがひとつにまとまっていきます。先生方も子どもたちの横について、声を出して盛り上げていました。さあ、どこまで跳べるか…本当に楽しみです!
体育祭は、みんなのためのものです。そして、「優勝」や「1位」を目指して子どもたちは頑張ると思いますが、最後には順位は関係ありません。一生懸命やったかが重要だとかつての私の教え子が教えてくれました(一昨年のひとりごとに載せました)。
3年生ブロックリーダーの彼は、何より日常生活を頑張っていました。誰よりも挨拶をし、誰よりも授業に集中し、誰よりも掃除を頑張りました。誰にでも優しく他の人の仕事まで手伝うなど、気配りも忘れませんでした。体育祭練習では、全力で走り、誰よりも声を出し、的確な指示を出しながら取り組みました。きっと相当疲れているはずなのに、イヤな顔ひとつせず、弱音を吐かず本番まで常に一生懸命にリーダーとしての責任を果たし続けました。そして、当日…精一杯頑張った彼(私)のブロックは、「優勝」することはできませんでした。ブロック解団式のとき、多くの生徒が下を向いて泣いている中、彼は最後にブロックの仲間にこう語りかけました。
「みなさん、顔を上げてください。あの得点ボードを見てください。あの点数には、全員の頑張りが詰まっています。1番だろうが、最下位だろうが、みんなが一生懸命頑張ってくれたから、その結果の点数が入っているのです。最下位でも点数は入っています。確かに優勝はできませんでした。でも、みんながいてくれたおかげであの点数になったのです。だから、みなさんは、ここにいるだけで価値があるのです。みなさんと頑張れたことを僕は誇りに思います。だから、胸を張ってください。顔を上げてください。みなさんと共に過ごした時間は、僕の『宝物』になりました。こんなリーダーについてきてくれて本当にありがとうございました!」
深々と頭を下げる彼に割れんばかりの拍手が送られたのは言うまでもありません。ブロック全体があたたかな涙と笑顔に包まれました。そのあと、「藤井先生からお願いします」と言われましたが、私はもう言葉が見つかりませんでした。私は彼に、そしてそこにいた子ども達にただ、「こんなにも素敵な“思い”をさせてくれてありがとう。君たちは本当に素晴らしい!」とだけ伝えました。
「みなさんはここにいるだけで価値があるのです…みなさんと共に過ごした時間は僕の“宝物”です…」、こんなにも素敵な言葉が子どもから発せられる。私は今、思い出しても涙が出そうになります。こんなに素敵な子どもたちと過ごせた時間は私にとっても“宝物”です。子どもたちへの感謝の気持ちでいっぱいになります。
大縄跳びでも何でも、子どもたちが全力で取り組んでくれて、最後は順位なんて関係なく「一緒に頑張れてよかった」「ここにいられてよかった」「仲間がいてくれてよかった」「大野東中でよかった…」、そして、「私の命は尊い、私の存在もかけがえがない、だからこそみんなもかけがえがない!」、そう思ってくれたらと思います。
これから、子どもたちがどんな頑張りを見せてくれるか…本当に楽しみです。
(ひとりごと 第1008号)